「エンジンをかけると、ガラガラという音がする」
「ウォーターポンプから音がしていると言われたけれど、冷却水は漏れていない。本当に交換が必要なの?」
このように疑問に思う方もいると思います。
ウォーターポンプは、エンジンを冷やすための冷却水を循環させる部品です。
故障すると冷却水が漏れることもありますが、今回紹介する車は、交換する直前まで漏れやにじみがありませんでした。
最初は「鳴っているかどうか迷う程度」の小さな音でしたが、約4か月・約4,000km後には、エンジンをかけている間ずっとガラガラ音が聞こえる状態まで悪化しました。
この記事では、実際にウォーターポンプを交換した例をもとに、異音の確認方法や、そのまま乗ってよいのかを解説します。
ウォーターポンプは何をしている部品?
エンジンは作動すると大きな熱を発生します。
その熱を逃がすため、エンジン内部とラジエーターの間を冷却水が循環しています。
ウォーターポンプは、その冷却水を循環させる役割を持つ部品です。
ウォーターポンプの働きが悪くなると、冷却水が正常に循環できず、水温が上昇する可能性があります。
ただし、最初からオーバーヒートしたり、大量に冷却水が漏れたりするとは限りません。
今回のように、小さな異音から始まることもあります。
ガラガラ音だけではウォーターポンプと断定できない
ウォーターポンプ内部のベアリングなどが傷むと、ガラガラ、ゴロゴロといった音が出ることがあります。
ただし、エンジン周辺には、ほかにも回転する部品があります。
- オルタネーター
- エアコンコンプレッサー
- ベルトテンショナー
- アイドラープーリー
- ウォーターポンプ
これらは故障すると、似たような音が出ることがあります。
そのため、エンジンルームからガラガラ音が聞こえたからといって、すぐにウォーターポンプ交換とは判断できません。
どの部品から音が出ているのか、切り分ける必要があります。
車検時には、鳴っているか迷う程度の音だった
今回の車は、車検時にエンジンをかけたところ、わずかな異音が聞こえました。
はっきりとしたガラガラ音ではなく、
「少し鳴っているような気がする」
「鳴っていないと言われれば、そうかもしれない」
という程度です。
そこで、エアコンベルトを外して回転する部品を減らし、音の発生場所を絞りました。
その結果、ウォーターポンプ側からの異音が疑われたため、車検時に交換をおすすめしています。
ただ、お客様からは費用を抑えたいという希望があり、そのときは交換を見送りました。
冷却水漏れや水温上昇もなかったため、
音が大きくなってきたら、早めに来てください。
と説明しています。
この状態で「次の車検まで大丈夫」「あと何km走れる」とは言えません。
異音の進み方は、車によって違うからです。
約4,000km後にガラガラ音が悪化
車検から約4か月、走行距離にして約4,000km後、異音が大きくなって再入庫しました。
このときは、始動直後だけ、暖まってからだけという症状ではありません。
エンジンをかけている間は、いつでもガラガラ音が聞こえる状態でした。
車検時より明らかに症状が進んでいたため、ウォーターポンプを交換することになりました。
冷却水が漏れていなくても傷むことがある
今回の車には、冷却水の漏れやにじみはありませんでした。
それでも、ウォーターポンプを取り付けた状態で確認すると、手で回したときにゴリゴリした感触があり、回転部分にガタも見られました。
ウォーターポンプには、冷却水を密閉する部分だけでなく、回転を支えるベアリングもあります。
そのため、冷却水が漏れていなくても、ベアリングが傷んで異音やガタが出ることがあります。
今回は、
- ウォーターポンプ側から音が出ていた
- 以前より音が大きくなった
- 手で回すとゴリゴリした
- 回転部分にガタがあった
という複数の判断材料がそろっていました。
交換後は、それまで出ていたガラガラ音が完全に消えています。
異音がしても、そのまま乗って大丈夫?
小さな異音が出たからといって、すぐに走れなくなるとは限りません。
今回の車も、最初に異音を確認してから約4,000km走行しています。
ただし、これは「4,000kmまでは大丈夫」という意味ではありません。
今回たまたま、その距離を走れただけです。
別の車では、短期間で音が大きくなったり、冷却水が漏れたりする可能性もあります。
私なら、ウォーターポンプからの異音とガタが確認できた場合は、冷却水が漏れていなくても早めの交換をおすすめします。
交換を見送る場合は、音の変化だけでなく、冷却水の量や水温にも注意する必要があります。
走行を続けないほうがよい症状
次のような症状がある場合は、無理に走行せず、安全な場所へ停車してロードサービスへ相談してください。
- 赤い水温警告灯が点灯した
- 水温計が通常より高い
- エンジンルームから蒸気が出た
- 冷却水が大量に漏れている
- ガラガラ音が急に大きくなった
- 暖房が急に効かなくなった
- ベルトが外れている
特に、水温警告灯が点灯したり蒸気が出たりしている場合は、オーバーヒートしている可能性があります。
エンジンが熱い状態でラジエーターキャップを開けると、熱い冷却水が噴き出す危険があるため、すぐに開けないでください。
ウォーターポンプ交換後に確認したこと
今回のウォーターポンプは、エンジン外側の補機ベルトで駆動するタイプでした。
車種によっては、タイミングベルトで駆動するタイプや、電動式のウォーターポンプもあります。
構造によって分解する範囲が違うため、同じウォーターポンプ交換でも作業時間や費用は異なります。
今回の作業では、ラジエーター側とウォーターポンプ側から冷却水を抜き、交換後に約2L補充しました。
エンジン内部やヒーター側には冷却水が残るため、完全な全量交換とは言い切れませんが、ある程度まとまった量が入れ替わっています。
冷却水を入れたあとは、エア抜きバルブから冷却系統の空気を抜きました。
その後にエンジンを暖機し、
- ヒーターが正常に効く
- 水温が安定している
- 電動ファンが回る
- 冷却水漏れがない
- 交換前の異音が消えている
ことを確認して、作業完了です。
異音の診断は切り分けが大切
エンジンルームから異音がすると、音の聞こえる方向だけで原因を判断したくなるかもしれません。
しかし、ベルトでつながっている回転部品の音は伝わりやすく、別の場所から鳴っているように聞こえることがあります。
今回も、最初からウォーターポンプと決めつけず、ベルトを外して関係する部品を減らしながら確認しました。
一般の方が自分でベルトを外したり、エンジンをかけた状態で回転部へ手を近づけたりするのは危険です。
ガラガラ音が気になる場合は、
- いつ音が出るか
- エアコンのオン・オフで変わるか
- 音が以前より大きくなっているか
- 水温警告灯が点灯していないか
- 冷却水が減っていないか
を整備工場へ伝えると、診断の参考になります。
まとめ
ウォーターポンプは、冷却水が漏れていなくても、内部のベアリングが傷んで異音やガタが出ることがあります。
今回の車は、車検時には鳴っているか迷う程度の小さな音でしたが、約4か月・約4,000km後には、エンジンをかけている間ずっとガラガラ音が出る状態まで悪化しました。
確認すると、ウォーターポンプを手で回したときにゴリゴリした感触があり、回転部分にもガタがありました。交換後は異音が消えています。
ただし、エンジン周辺には似た音を出す部品があるため、ガラガラ音だけでウォーターポンプと決めつけることはできません。
今回4,000km走れたからといって、ほかの車でも同じ距離を走れるとは限りません。
音が大きくなった、水温が上がった、冷却水が減ったなどの変化があれば、早めに点検を受けてください。


