タイヤにネジや釘が刺さってパンクしたとき、
「穴をふさげば、まだ使えるのでは?」
と思う方も多いと思います。
実際、ネジや釘がタイヤの接地面に刺さっていて、内部まで大きく傷んでいなければ、パンク修理で対応できることがあります。
一方で、ネジが修理できそうな場所に刺さっていても、タイヤ交換をおすすめする場合があります。
判断に影響するのは、穴の位置や大きさだけではありません。
空気が抜けた状態で走っていないか、タイヤの側面に傷や走行した跡が残っていないかも重要です。
今回は、接地面の中央付近にネジが刺さっていたものの、パンク修理ではなくタイヤ交換になった事例をもとに、修理できる条件や走行を続ける危険性を解説します。
ネジが真ん中に刺さっていても交換になることがある
今回の車は、右前のタイヤにネジが刺さっていました。
ネジの位置は、タイヤが路面に接するトレッド面の中央付近です。
穴の位置だけを見ると、パンク修理を検討できそうな状態でした。
お客様の話では、タイヤの異変に気づいた場所から自宅までの距離は約500メートルだったそうです。
走行中に、
「タイヤが少し重いような気がする」
という違和感はあったものの、自宅まで近かったため、そのまま走行していました。
ただし、実際にいつから空気が減っていたのかは分かりません。
異変に気づく前から少しずつ空気が抜けていて、実際には1〜2キロ程度走っていた可能性もあります。
さらに、走行した場所には砂利道も含まれていました。
タイヤを確認すると、側面には空気が少ない状態で走ったと思われる跡が、一周にわたってはっきり残っていました。
この状態では、ネジの穴だけを修理して再使用するのはおすすめできませんでした。
側面の一周した跡から何が分かる?
タイヤは内部の空気によって車の重さを支えています。
空気が十分に入っていれば、タイヤの側面は適切な形を保ったまま回転します。
しかし、空気が少なくなると、タイヤの側面が大きくつぶれます。
その状態で走行すると、側面が繰り返し折れ曲がり、外から見えない部分まで傷む可能性があります。
タイヤの側面に一周の擦れた跡が残っている場合は、空気が少ない状態でタイヤが回転した可能性が高いと考えます。
内部では、
- タイヤの内側が擦れている
- ゴムの粉が出ている
- タイヤの骨格となるコードが傷んでいる
- 側面が過度に折れ曲がっている
といったことが起きている可能性があります。
今回は、タイヤを外して内部を確認してから判断したわけではありません。
ただ、外から見ても側面の走行痕がはっきりしていたため、内部損傷の可能性を考え、修理せず新品タイヤへ交換しました。
500メートルしか走っていなくても交換になる?
パンク後に走った距離が短ければ、必ず修理できるというわけではありません。
反対に、何メートル走ったら必ず交換になる、という距離だけで判断することもできません。
タイヤの傷み方は、次のような条件でも変わります。
- 空気がどの程度残っていたか
- 車の重さ
- 走行速度
- 舗装路か砂利道か
- タイヤの厚みや形状
- 異変に気づく前からどのくらい空気が減っていたか
お客様が「500メートルしか走っていない」と話していても、パンクした正確な場所が分からなければ、実際の走行距離は判断できません。
今回も、異変に気づく前から空気が減っていた可能性があります。
そのため私は、申告された距離だけではなく、タイヤに残っている走行痕や変形も含めて判断します。
薄いタイヤは特に慎重に判断したい
今回のタイヤは、一般的なタイヤより側面の高さが低い、比較的薄いタイプでした。
このようなタイヤは、空気が少ない状態になると、タイヤの側面がホイールと路面の間で強くつぶれやすくなります。
薄いタイヤだから、少し走っただけで必ず使えなくなるとは限りません。
ただし、一般的なタイヤより側面に余裕が少ないため、パンクした状態で走行した場合は、内部損傷を慎重に考える必要があります。
今回も、お客様から聞いた走行距離だけで修理可能とは判断せず、側面の状態を優先しました。
パンク修理を検討できるのはどんなタイヤ?
一般的には、次のような状態であれば、パンク修理を検討できることがあります。
- ネジや釘がトレッド面に刺さっている
- 穴が大きすぎない
- サイドウォールに傷や膨らみがない
- 空気が抜けた状態で長く走っていない
- タイヤ内部に大きな損傷がない
トレッド面とは、タイヤが路面に接する部分です。
一方、サイドウォールと呼ばれるタイヤの側面は、走行中に曲がったり伸びたりする部分です。
側面にできた穴や傷は、安全に修理することが難しいため、一般的にはタイヤ交換になります。
また、ネジがトレッド面の中央に刺さっていても、空気が抜けた状態で走ったタイヤは、内部の状態を確認する必要があります。
今回のタイヤも、ネジの位置だけなら修理を検討できそうでした。
しかし、側面に一周のはっきりした走行痕があったため、安全を優先して交換しました。
タイヤを外さないと分からない損傷もある
外から見たときに大きな傷がなくても、タイヤの内側が傷んでいる場合があります。
パンク修理には、タイヤの外側から修理材を差し込む方法と、タイヤをホイールから外して内部から修理する方法があります。
外側からの修理は短時間で対応しやすい一方、タイヤ内部の状態までは確認できません。
空気が少ない状態で走った可能性がある場合は、タイヤを外して内側を確認しなければ、安全に再使用できるか判断しにくいことがあります。
ただし、今回のように側面の一周した走行痕が明らかな場合は、内部損傷の可能性を考え、修理を進めず交換をおすすめすることもあります。
外側にネジが刺さっているだけに見えても、タイヤ全体の状態を確認することが大切です。
パンクに気づいたら走り続けない
走行中に、
- ハンドルが重くなった
- 車が左右に流れる
- タイヤ付近から異音がする
- 車体がいつもより傾いている
- タイヤ空気圧の警告灯が点灯した
といった違和感があれば、安全な場所へ停車してタイヤを確認してください。
本来は、ロードサービスやレッカーを呼ぶのが安全です。
特に、
- タイヤがバーストしている
- 側面が切れている
- ホイール近くまで完全につぶれている
- 強い異音や振動がある
- タイヤの状態を自分で判断できない
という場合は、無理に走行しないほうがよいでしょう。
パンクした状態で走り続けると、本来は修理できたタイヤまで交換が必要になることがあります。
さらに、ホイールまで傷めると、修理費が大きくなる可能性もあります。
自宅や整備工場まで少しの距離だとしても、タイヤがつぶれた状態で走るのはおすすめできません。
応急修理キットは一時的な移動のためのもの
最近の車には、スペアタイヤの代わりにパンク応急修理キットが搭載されていることがあります。
応急修理キットは、整備工場などへ移動するための一時的な処置です。
どのようなパンクにも使えるわけではなく、タイヤの側面が切れている場合や、大きく破損している場合などには使用できません。
また、応急修理剤を使用したからといって、そのまま通常どおり走り続けられるわけではありません。
使用方法や走行できる距離、速度などは車種や修理キットによって異なるため、車載の説明書に従う必要があります。
タイヤの損傷状態が分からない場合や、使用してよい状態なのか迷う場合は、無理に自分で対応せず、ロードサービスへ相談したほうが安全です。
応急修理剤を使用した場合は、整備工場へそのことを伝えてください。
タイヤの内部やホイールに修理剤が付着しているため、点検や交換の際に清掃が必要になることがあります。
タイヤは1本だけ交換しても大丈夫?
今回の車は、新車から約半年で、ほかのタイヤの溝もほとんど減っていませんでした。
そのため私は、パンクした右前のタイヤ1本だけを交換する方法でもよいと考えました。
ただし、新車装着時のタイヤは一般販売されていない銘柄だったため、まったく同じタイヤを用意することは納期の都合で、できませんでした。
そこで、同じメーカーの中から、サイズや性能が近いタイヤを提案しました。
お客様は、左右で銘柄や状態が違うことを気にされたのか、前輪2本の交換を希望されました。
最終的には、同じ新品タイヤを前輪左右へ取り付けています。
1本交換がよいか、左右2本交換がよいかは、次の条件で変わります。
- 残っているタイヤの溝
- 使用年数
- 同じ銘柄を用意できるか
- タイヤの性能差
- 駆動方式
- お客様が左右差を気にするか
今回のように、新車から半年で溝の差がほとんどなければ、1本交換も現実的な選択です。
一方で、残りのタイヤが大きく減っている場合や、左右で性能差が大きくなる場合は、2本交換をおすすめすることがあります。
私はこう考えます
パンクしたタイヤを修理できるかどうかは、ネジや釘が刺さった位置だけでは決まりません。
トレッド面の中央付近で、穴が小さく、空気が抜けた状態で走っていなければ、修理を検討できることがあります。
一方で、側面に一周の走行痕がある場合は、内部が傷んでいる可能性を考えます。
今回のようにお客様から「500メートルしか走っていない」と聞いても、いつから空気が減っていたのかまでは分かりません。
私は、申告された距離よりも、実際のタイヤの状態を見て判断します。
タイヤは安全に直接関わる部品です。
高価なタイヤであれば修理して使いたい気持ちも分かりますが、内部損傷の可能性が高い状態で無理に再使用することはおすすめできません。
少しの距離だから大丈夫と走り続けるより、安全な場所へ停車し、ロードサービスや整備工場へ相談したほうが、結果的にタイヤやホイールの損傷を抑えられることもあります。
まとめ
パンクしたタイヤは、ネジや釘の位置によっては修理できることがあります。
ただし、修理できるかどうかは、穴の位置や大きさだけでは判断できません。
空気が少ない状態で走行すると、タイヤの側面や内部が傷み、修理できそうな穴でもタイヤ交換になることがあります。
今回のタイヤは、ネジがトレッド面の中央付近に刺さっていました。
しかし、側面に一周のはっきりした走行痕があり、内部損傷の可能性を考えて新品タイヤへ交換しました。
パンクに気づいたら、できるだけ走行を続けず、安全な場所へ停車してください。
バーストしている、側面が切れている、タイヤが大きくつぶれている場合は、ロードサービスを呼ぶほうが安全です。
応急修理キットを使用する場合も、車載の説明書に従い、あくまで一時的な処置として考える必要があります。
少ししか走っていないつもりでも、タイヤに残った跡によっては交換が必要になることがあります。
修理か交換かは、走った距離だけではなく、タイヤ全体の状態を見てもらって判断しましょう。


