タイヤや車の部品は、インターネットで安く購入できることがあります。
そのため、
「ネットで買った部品を、整備工場へ持ち込んで取り付けてもらいたい」
と考える方も多いでしょう。
しかし、整備工場へ問い合わせると、
「持ち込みはできません」
「持ち込みの場合は工賃が高くなります」
「部品によっては取り付けられません」
と言われることがあります。
持ち込み部品だからといって、すべての整備工場が嫌がっているわけではありません。
一方で、整備工場が手配した部品とは、適合確認や保証、不具合が起きた場合の対応が異なります。
この記事では、20年以上整備の現場でお客様対応をしてきた経験をもとに、持ち込み部品を断られる理由や工賃が高くなる理由、依頼前に確認しておきたいことを解説します。
ネットで買った部品は整備工場へ持ち込める?
持ち込み部品に対応するかどうかは、整備工場によって異なります。
すべての部品に対応する工場もあれば、持ち込み自体を受け付けていない工場もあります。
また、
- タイヤなら対応できる
- ブレーキ部品は対応できる
- 電装部品は慎重に判断する
- 足回りの改造部品は受け付けない
など、部品によって対応を変えている工場もあります。
私の勤務先では、持ち込みだから絶対に作業しないというわけではありません。
ただし、部品によっては適合や品質の確認が難しく、取り付けを慎重に判断します。
特に、購入先やメーカーが分からない電子部品は、早期故障や初期不良があったときに原因を切り分けにくいため、積極的には受けたくないのが正直なところです。
購入してから持ち込むのではなく、買う前に作業予定の整備工場へ相談するのが一番確実です。
持ち込みで一番多いのはネット購入のタイヤ
私の現場で一番多い持ち込み品は、インターネットで購入したタイヤです。
新品タイヤは、店舗で購入するよりネットのほうが安いことがあります。
中古タイヤは状態の判断が難しく、必ずしも割安とは限りませんが、新品タイヤをネットで購入して交換だけ工場へ依頼する方法は、費用を抑える選択肢の一つです。
ただし、ネットで購入したタイヤは、店舗で在庫しているタイヤと同じ状態で届くとは限りません。
配送の都合で何本も重ねられ、タイヤが横につぶれた状態で届くことがあります。
この状態が、持ち込みタイヤの作業時間に影響する場合があります。
つぶれたタイヤは通常より組み付けに時間がかかる
タイヤが強くつぶれていると、ホイールへ組み付けたあとも、タイヤのビード部分が十分に外側へ広がらないことがあります。
ビードとは、タイヤとホイールが密着して空気を保持する部分です。
ビードとホイールの間に隙間があると、空気を入れても隙間から抜けてしまい、タイヤを膨らませられません。
整備工場には、こうしたタイヤへ対応するためのチェンジャーや作業方法があります。
それでも通常のタイヤより手間がかかり、タイヤの向きを変えたり、ビード部分を広げたりしながら空気を入れる必要があります。
予約が詰まっていると、その場ですぐに作業を終えられず、いったん帰っていただき、完了後に連絡することもあります。
タイヤが作業日より前に工場へ直送されている場合は、ビードとビードの間に物を入れ、組み付けまでに少し広がるよう準備しておくこともあります。
持ち込みタイヤでは、車が入庫する前から、このような準備が必要になる場合があります。
持ち込み工賃が高くなるのはなぜ?
持ち込み品の工賃は、通常より高く設定されていることがあります。
私の勤務先では、持ち込みタイヤの交換工賃は、通常工賃の1.5倍です。
ただし、これは勤務先の一例であり、全国共通の料金ではありません。
通常と同じ工賃の店もあれば、持ち込みを受け付けない店もあります。
工賃が高くなる理由には、主に次のようなものがあります。
- 部品販売による利益がない
- 適合や商品の状態を確認する必要がある
- 通常より作業に時間がかかる場合がある
- 不具合が出たときの原因確認が複雑になる
- 部品の返品や保証を工場側で処理できない
正直にいえば、部品の販売利益がなくなることも理由の一つだと思います。
整備工場は、作業工賃だけでなく、部品の販売も含めて経営しています。
持ち込みでは部品の利益がない一方で、適合違いや初期不良への対応など、通常より手間やリスクが増えることがあります。
そのため、持ち込み工賃を高めに設定すること自体は、不自然なことではないと考えています。
取り付け途中で適合しないと分かることもある
お客様が車種を確認して購入した部品でも、実際には取り付けられない場合があります。
以前、持ち込まれたダウンサスを取り付けようとしたところ、二輪駆動車用と四輪駆動車用の違いにより、スタビライザー関連の取付部分が合わなかったことがありました。
部品を箱から出して見ただけでは分かりにくく、作業を進めた途中で違いに気づく場合もあります。
このようなとき、お客様から、
「最初から気づかなかったのですか?」
と言われることがあります。
しかし、持ち込まれた部品の形状を、作業前にすべて純正部品と比較して判断するのは難しいこともあります。
同じ車名でも、
- 年式
- 型式
- 二輪駆動・四輪駆動
- グレード
- 装備の違い
によって部品が変わることがあります。
適合違いが分かれば作業を中断する必要があり、取り外した部品を元に戻す作業も発生します。
こうしたリスクも、持ち込み部品を慎重に扱う理由です。
電子部品は特に慎重になる
センサー、スイッチ、イグニッションコイルなどの電子部品は、取り付けられたからといって正常に使えるとは限りません。
短期間で不具合が出た場合も、
- 持ち込んだ部品の初期不良
- 車への適合違い
- 取付作業の問題
- 配線や制御側の故障
- もともとの診断が違っていた
など、さまざまな可能性があります。
整備工場が用意した部品であれば、仕入れ先へ確認して対応できます。
一方、ネットで購入した部品は、工場が品質や販売経路を確認できません。
そのため、購入先やメーカーが分からない電子部品は、取り付けを断られたり、保証できないことを説明されたりすることがあります。
持ち込み部品の保証はどうなる?
整備工場が用意した部品に初期不良があった場合は、工場が仕入れ先へ確認し、部品交換などの対応を進めるのが一般的です。
持ち込み部品の場合、部品を販売したのは整備工場ではありません。
そのため、初期不良が認められたとしても、返品や代替品の手配、購入先とのやり取りは、お客様自身で行うことになる場合があります。
また、部品の初期不良で再度取り外しと取り付けが必要になった場合は、再交換の工賃がかかる工場もあると思います。
工場が販売した部品ではなく、取付作業にも問題がないことが確認できるのであれば、再作業にも工賃が必要になるという考え方には無理がありません。
ただし、保証内容や再交換時の工賃は、整備工場や購入先によって異なります。
作業を依頼する前に、
- 部品が不良だった場合は誰が対応するのか
- 再交換の工賃は必要か
- 取り外した部品は返却されるか
- 持ち込み部品でも作業保証があるか
を確認しておくと安心です。
持ち込み部品で失敗しないためのポイント
持ち込み部品を利用すること自体は、悪いことではありません。
うまく利用すれば、部品代を抑えられる場合もあります。
ただし、購入してから取り付け先を探すと、対応してもらえなかったり、予想より工賃が高かったりすることがあります。
失敗を減らすためには、次の点を確認しておきましょう。
購入前に整備工場へ相談する
「この部品を買おうと思っているのですが、取り付けできますか?」
と購入前に相談するだけで、適合違いや作業不可のトラブルを減らせます。
商品ページや品番を見せると、工場側も判断しやすくなります。
持ち込み工賃を先に確認する
部品を安く購入できても、持ち込み工賃を含めると店舗で部品を手配してもらう場合と大きく変わらないことがあります。
通常工賃と同じなのか、割増になるのかを事前に確認してください。
適合確認を販売店任せにしない
ネット通販では「この車に適合します」と表示されても、型式や年式、駆動方式などの条件が不足していることがあります。
車検証の情報を使い、型式や初度登録年月、型式指定番号、類別区分番号なども適合するか確認したほうが安心です。
保証と返品条件を確認する
初期不良があった場合の返品期限や、取り付け後でも保証されるのかを確認しておきましょう。
商品によっては、取り付けた時点で返品できなくなることもあります。
作業日より前に部品を確認してもらう
工場へ直送できる場合は、作業日より前に届くよう手配すると、商品の状態や品番を事前に確認できる場合があります。
ただし、直送を受け付けているか、保管料が必要かは工場によって異なるため、勝手に送らず、必ず先に相談してください。
持ち込みは整備工場への事前相談が大切
ネットで部品を購入すること自体は、悪いことではありません。
タイヤなどはネットのほうが安く購入できることもあり、上手に利用すれば整備費用を抑えられます。
一方で、持ち込み部品は、工場が手配した部品と比べて、
- 適合確認
- 商品の状態確認
- 作業時間
- 保証対応
- 初期不良時の再作業
の考え方が変わります。
整備工場が持ち込みを断ったり、工賃を高く設定したりするのは、単に持ち込み客を嫌っているからとは限りません。
通常より利益が少なくなる一方で、作業の手間や不具合時のリスクが増えることも理由です。
大切なのは、部品を買ってから、
「取り付けてください」
と持っていくのではなく、購入前に整備工場へ相談することです。
適合や工賃、保証の扱いを先に確認しておけば、お客様も整備工場も納得したうえで作業を進めやすくなります。
たった一度の事前相談が、部品の買い直しや追加工賃、保証をめぐるトラブルを防ぐことにつながると思います。


