1年点検は本当に受けるべき?整備士が現場目線で語る必要性と判断基準

車検・点検

「1年点検って、受けたほうがいいんですか?」

自動車整備の現場で、お客様からよく聞かれる質問の一つです。

1年点検(法定12ヶ月点検)は法律で定められた定期点検で、自家用乗用車や軽自動車では1年ごとに行うことになっています。

ただ、車検のように「受けていなければその時点で公道を走れなくなる」というものではないため、実際には受けていない方もいます。

20年以上整備の現場で車を見てきた私の考えでは、1年点検を受けるかどうかは、単に「法律で決まっているから」だけではなく、走行距離や車の使い方、前回の車検時の状態まで含めて考えることが大切です。

この記事では、1年点検で実際にどんなところを見るのか、距離を走る車とあまり走らない車では何が違うのかを、現場目線で解説します。

1年点検を受けていなくても車検には通る?

まず、ここを気にしている方もいると思います。

結論からいうと、1年点検を受けていないこと自体が、次の車検の合否を決めるわけではありません。

車検と定期点検は別のものです。

車検は、検査を受けた時点で車が保安基準に適合しているかを確認するものです。

一方の1年点検は、車検と車検の間にも定期的に車の状態を確認し、必要な整備につなげていくためのものです。

自家用乗用車などの定期点検は使用者の義務ですが、未実施そのものに対する直接的な罰則は定められていません。

だからといって「受けなくても何も問題ない」という話ではなく、車検とは目的の違う点検として考えるのが分かりやすいと思います。

1年点検では実際にどんなところを見る?

1年点検では、ブレーキや下回りなど、普段ドライバーが自分では確認しにくい部分も点検します。

たとえばブレーキでは、車を持ち上げてタイヤを回し、ブレーキに異常な引きずりがないか確認します。

ブレーキパッドの残量を確認するときは、ホイールを外してパッドの厚みを確認します。

ただし、すべての車で毎回キャリパーを外したり、内部まで分解したりするという意味ではありません。必要があれば、さらに詳しく確認していきます。

また、自家用乗用車の1年点検には、前回の定期点検からの走行距離が年間5,000km未満など、一定の条件を満たせば省略できる点検項目があります。

ブレーキの引きずりやパッドの摩耗もその対象となる項目ですが、前回の定期点検から5,000km以上走っている場合は、距離を理由に省略することはできません。

そのほかにも、

  • ドライブシャフトなどのゴムブーツに破れがないか
  • 足回りにガタや異常がないか
  • オイルや冷却水などの漏れがないか
  • 対象となる電子制御装置に異常がないか

といった部分を確認していきます。

普段の空気圧確認やウォッシャー液の補充などの日常点検とは違い、リフトで車を持ち上げたり、タイヤを外したりしないと確認しにくい部分まで見るのが、1年点検の大きな意味だと思います。

1年点検は車の「健康診断」のようなもの

私はお客様に、1年点検を「人間でいう健康診断のようなものです」と説明することがあります。

もちろん、点検を受けたからといって、その後の故障をすべて防げるわけではありません。

それでも、状態が悪くなり始めた部品を早めに見つけられることには意味があります。

たとえばブレーキの動きが悪くなっている場合、早い段階で見つかれば比較的小さな修理で済むことがあります。

そのまま使い続けて固着がひどくなると、ブレーキパッドが片減りしたり、ローターまで傷んだりして、修理する範囲が広がる場合があります。

ドライブシャフトブーツも同じです。

ブーツが破れた段階で見つかれば、ブーツ交換で済むことがあります。

ところが破れたまま走り続け、中のグリスが飛び散ったり、砂や水が入ったりして内部まで傷めると、ドライブシャフト本体の交換が必要になる場合があります。

「異音がしてから直す」のではなく、修理範囲が広がる前に状態を確認できる可能性があるのが、定期点検のメリットです。

年間15,000km以上走るなら、私ならかなりおすすめします

1年点検を受けるか判断するとき、走行距離は一つの目安になります。

私の経験では、年間15,000km以上走るような車なら、1年点検はかなりおすすめします。

年間15,000km走る場合、車検から1年後には約15,000km、次の車検までには約30,000km走ることになります。

タイヤやブレーキパッドなどは、その間にも少しずつ消耗します。

前回の車検では問題がなかった部品でも、次の車検まで何もしないとなると、それなりの距離を走ることになります。

通勤などで毎日車を使う方や、長距離を走ることが多い方なら、車検と車検の中間で一度確認しておく意味は大きいと思います。

反対に年間5,000〜10,000kmくらいであれば、走行距離だけで「受ける・受けない」を決めるのではなく、前回の車検で様子見にした部分があるか、普段どんな乗り方をしているかも含めて考えます。

年間2,000〜3,000kmでも「走らないから安心」とは限らない

年間2,000〜3,000km程度しか走らない車なら、ブレーキパッドやタイヤが走行によって減るスピードは遅くなります。

そのため、年間15,000km走る車と同じような消耗品交換をおすすめする必要はないと私は考えています。

ただし、走行距離が少ない=車が傷まない、ではありません。

私の経験では、あまり距離を走っていない車でも、ブレーキ周りにサビが出ていたり、キャリパーの動きが悪くなっていたりすることがあります。

タイヤやゴムブーツなども、走行距離だけでなく年数によって硬化やひび割れが進むことがあります。

バッテリーも注意したい部分です。

「たまにしか乗らない」「1回の走行が近所への買い物だけ」といった使い方では、エンジン始動で使った電力を走行中に十分取り戻しにくい場合があります。

最近の車では、電圧が低下したことで複数の警告灯が点灯するケースを見ることもあります。

そのため私は、「ほとんど走っていないから1年点検を受ける意味がない」とまでは考えていません。

距離を走る車とは違って、経年劣化や普段の使い方を見ることが大切だと思います。

前回の車検で「様子見」にした部品を確認できる

1年点検でもう一つ大きいのが、前回の状態との比較です。

車検のときに、

「まだ交換しなくても大丈夫そうですが、次の車検までは微妙なので様子を見ましょう」

となる部品は珍しくありません。

たとえばブレーキパッドが4mm残っていたとします。

その時点ですぐ交換するかどうかは、年間走行距離やこれまでの減り方によっても変わります。

1年後にもう一度確認すれば、

「思ったより減っていないので、もう少し使えそう」

「この1年でかなり減ったので、次の車検を待たずに交換したほうがよさそう」

と判断しやすくなります。

タイヤの溝やバッテリーの状態なども同じです。

前回の記録が残っていれば、今だけを見るよりも、その車がどのくらいのペースで消耗しているのかを考える材料になります。

私は、こうした前回からの変化を見ることも1年点検の大きなメリットだと思っています。

タイヤ交換の時期が近ければ一緒に相談するのもあり

雪が降る地域では、春と冬にタイヤ交換をする方も多いと思います。

1年点検の時期とタイヤ交換の時期が近ければ、同じタイミングで依頼できないか整備工場に相談してみるのも一つの方法です。

1年点検ではホイールを外してブレーキパッドを確認する場合もあるため、工場によってはタイヤ交換を同時に依頼することで、作業や工賃をまとめられることがあります。

ただし、タイヤ交換シーズンは整備工場が混みやすいため、点検も一緒にお願いしたい場合は早めに確認しておくと安心です。

私ならこんな人には1年点検をおすすめします

1年点検を受けるか迷っているなら、走行距離だけで決めなくてもいいと思います。

私なら、次のような方には特におすすめします。

  • 年間15,000km以上走る
  • 毎日の通勤などで車をよく使う
  • 短距離走行やちょい乗りが多い
  • 普段、自分では車の状態をほとんど確認しない
  • 前回の車検で「様子を見ましょう」と言われた部品がある
  • 次の車検までの間に一度状態を確認しておきたい

反対に、年間走行距離が少なく、前回の車検でも特に経過観察する部分がなかった車なら、距離を走る車ほど大きな変化が出ていないこともあります。

だから私は、すべての車に対して同じように「絶対に受けたほうがいい」と言うより、走行距離、車の年数、使い方、前回の状態を見て判断するのが現実的だと考えています。

まとめ|1年点検は次の車検までの中間チェック

1年点検を受けていないこと自体が、次の車検の合否を決めるわけではありません。

ただし、1年点検は法律で定められた定期点検であり、車検とは役割が違います。

私は20年以上整備の現場で車を見てきましたが、距離を走る車なら車検から1年後でも消耗が進んでいることがあります。

反対に、走行距離が少ない車でも、ブレーキやゴム部品、バッテリーなどに変化が出ていることがあります。

点検をしたから次の車検まで故障しないという保証はありません。

それでも、今の車の状態を確認し、前回からどのくらい変化したのかを見る機会にはなります。

「自分の車なら1年点検を受けたほうがいいのかな?」と迷っているなら、年間走行距離だけでなく、普段の使い方や前回の車検で指摘された内容も含めて判断してみてください。

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